自然が生み出す神秘の宝石、
"真珠"とはいったい何なのか?

長い年月と手間暇をかけて、やっとのことで生み出される"一粒"。「真珠」とは、いったいどんな物質で、どうやってつくられるのかをご紹介します。きっと、真珠を知ることが、真珠を楽しむことや、延いては、お選び頂いた一品を末永く愛していただけることに繋がるはずです。

COLOR

真珠の色には、表面色・実体色と呼ばれる物体そのものの色(色素)と、反射・屈折・透過の作用による「干渉色」があります。物体そのものの色は、炭酸カルシウムの結晶の色と、結晶間を埋める高タンパク質(コンキオリン)にある色素の色によって決まります。結晶の表面あるいは真珠層内部での光の反射・屈折・透過により見える色は「干渉色」と呼ばれ、ピンク・グリーンの色合いが出現します。真珠表面は必ずしも360度同一の結晶構造を有しているわけではないため、見る面によって発色が変化する場合もあります。

LUSTRE

光沢は「テリ」と呼ばれます。数百から数千層にも及ぶ真珠層に光が差し込むと、反射したり、一部透過して反射したり、屈折したりとさまざまな経路を辿ります。そのような複雑な乱反射により奥深い光沢が生み出され、美しさを実感します。光沢の強さには真珠層の結晶が関係しており、大きい結晶の並びほどより多くの光を反射・屈折させ、より強いテリになります。ただし、結晶そのものの質も関わります。より良い結晶の生成には、貝の遺伝的な性質と生育環境が大切になります。

MATERIAL

真珠の大部分を占める「真珠層」は、炭酸カルシウム(CaCO3)の細かい結晶がおよそ90%、硬タンパク質がおよそ8%、その他2%は有機物・水分・微量成分で成り立っています。炭酸カルシウムは大きさ2~8um、厚さ約0.5umの結晶となって積み重なっており、この小さな結晶の間を、硬タンパク質「コンキオリン」の膜が埋めています。この結晶とコンキオリン膜による構造が真珠の光沢と色彩を生み出しています。※図は、わかりやすさのため一部誇張して表現しています。

STORY

1 母貝の生産

真珠を養殖するための母貝(ぼがい)を育てます。水槽内で貝を採卵受精させ、2~3年以上かけて成長させます。真珠生産に向く「優良母貝」は、大きさ・成長具合・活力・栄養状態・病気の有無などで評価されます。

2 仕立て

母貝が十分に成長したら、「挿核」(母貝の生殖巣に真珠核を挿入する)のショックを和らげるため、貝の活動を低下させる「抑制」を行います。また、生殖細胞を発達させない「卵止め」や、成熟した生殖細胞を放出させる「卵抜き」も同時に行います。

3 挿核

「オペ」とも呼ばれる重要な作業で、春から秋に行われます。母貝の生殖巣にメスで切り込みをつくり、貝殻を丸く削り出した「核」を挿入します。真珠核には、主にイシガイ科の淡水産二枚貝の殻が用いられます。挿核する際に、真珠袋を形成させるための「ピース(外套膜片)」を入れ、真珠核にピースが密着するように挿核します。

4 珠貝養生

挿核後の、貝の治癒や体調回復のための静養期間。屋内施設や岸近くの静かな環境で2~4週間休ませます。死亡率(挿核の衝撃で母貝が死亡する)・脱核率(核が抜け出てしまう)を低減したり、異常真珠の形成を防ぐ効果があります。

5 珠貝養成

養生を終えた母貝を沖に移動させ、真珠核に真珠層を本格的に形成させます。水温・塩分量・酸素量・栄養素の管理、海藻やフジツボなど付着生物の掃除、外敵対策、赤潮対策など、海の環境や貝の状態に合わせてきめ細かい管理を行いながら、真珠層が形成されるのを待ちます。

6 浜揚げ

冬を迎えると、いよいよ収穫。冬の低い水温は、真珠の表面層に「化粧巻き」と呼ばれる四季の中でもより優れた真珠層が形成されやすい状況にあります。ナイフ(貝むき出刃)で貝を開き、一つひとつ丁寧に真珠が取り出されます。長い年月をかけ、真珠が誕生する瞬間です。